
体験ダイビングに来られた親子。
20代の娘さんと、65歳のお母さま。
以前、旅行先で体験ダイビングをされた際、こんなことを言われたそうです。
「65歳のお母さまが本格的にダイビングを始めるなら、あなた(娘さん)がプロ資格を取った方が良いですよ」
実は、その話を聞く前に、私もまったく同じことをお伝えしていました。
すると娘さんが、
「それ、前にも言われました…」
と少し驚いたように話してくださいました。
最初は娘さんも、
「自分が案内できたら安心、くらいの意味かな?」
と思っていたそうですが、実際にはもう少し深い理由があります。
私のところにはダイビングプールがあるため、体力に不安がある方や、初めてで緊張されている方でも、かなり余裕を持ってスタートできます。
ですが、多くのダイビングショップには専用プールがありません。
その場合、“浅瀬とはいえ、いきなり海”というケースも少なくありません。
海では、水を飲んでしまった時も、疲れた時も、気分が悪くなった時も、陸上のようにすぐ完全に休めるわけではありません。
特に初心者の方や高齢の方にとっては、その環境自体が大きな負担になることがあります。
さらに、世の中で「ダイビング事故」と認識されるケースの中には、実際には水泳やランニング、ウォーキングでも起こり得る体調不良が含まれていることもあります。
ただ、ダイビングは特殊な環境だからこそ、“ダイビングが原因の事故”として受け止められやすい側面があります。
事業として考えると、サポートが必要な初心者や年配の方を受け入れるには、どうしても少人数対応になります。
すると利益率は下がりますし、万が一体調不良が起きれば、その日の企画全体が中止になることもあります。
たとえダイビングそのものが原因でなかったとしても、
「事故を起こしたショップ」
という印象だけが残ってしまうこともあり、その影響は小さくありません。
場合によっては、経営そのものに関わることすらあります。
だからこそ、多くのショップでは、一定年齢以上の方の受け入れを制限していることがあります。
もちろん、それは一律の線引きです。
実際には健康な方でも、若い人より元気な方でも、申し込み自体が難しいことがあります。
でも、“身近に支えてくれるプロ”がいる場合、状況は大きく変わります。
ここで大切なのは、「利益を出し続けなければならない職業プロ」ではなく、“家族や友人として寄り添えるプロ”の存在です。
そう聞くと、とても高いハードルに感じるかもしれません。
ですが、ダイビングのプロ資格は、集中して取り組めば半年ほどで取得することも可能です。
そして、その資格は単なる肩書きではありません。
取得する本人にとっては、一生モノの財産になり得ますし、
年配のご家族にとっては、
「仕事や子育てを終え、ようやく自分の時間が持てるようになった人生」
を、本当に楽しめるかどうかの分岐点になることもあります。
少し厳しい言い方をすれば、
“本当はやってみたかったことを、一生できないまま終わる”
のか、
“家族の支えによって、その夢を叶えられる”
のか。
その違いを生むこともあるのだと思います。
人生の中の、たった半年。
そう考えると、ダイビングのプロ資格というのは、
単に「自分が成長するため」の資格ではなく、
“誰かの人生を広げるための資格”
でもあるのかもしれません。
自分の挑戦が、
大切な人の「やってみたかった」を支える。
そんな資格って、実はあまり多くない気がします。




